新型コロナウイルス感染拡大への懸念から、日本の夏を彩る各地の祭りが相次いで中止に追い込まれている。多くの人々が一堂に集まる祭りの性質上、「密」を避けることは不可能。夏祭りは各地域にとって重要な観光資源であり、経済的損失は1兆8000億円に膨らむと推定する専門家もいる。
綜合ユニコムが発行する「月刊レジャー産業資料」の調査によると、約40万〜300万人が訪れる、集客ランキング上位の全国30の祭りのうち、毎年5〜9月に開催予定の24の祭りが開催を中止。残る6つも延期が3、神事のみが2、オンライン開催は1と、例年通りの通常開催は一つもなかった。
感染者ゼロ岩手も
日本三大祭りの一つで、山鉾(やまほこ)行事が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録されている京都の祇園祭は、山鉾巡行と神輿(みこし)渡御の中止を決定。1000年以上の歴史があるとされ、大阪の夏の風物詩としても知られる大阪天満宮(大阪市北区)の天神祭は本殿での神事を神職のみで営み、市中心部を流れる川で約100隻の船が行き交う主要行事「船渡御(ふなとぎょ)」などは中止する。
感染者が比較的少ない東北地方でも毎年200万人以上を動員する青森ねぶた祭や秋田竿燈(かんとう)まつりがいずれも戦後初の中止を決定した。
感染者ゼロの岩手県でも、盛岡さんさ踊りが中止に。東北の夏祭りを楽しむ人気の周遊ツアーも今年は実施されない。さんさ踊りの実行委員会担当者は「県内外からたくさんの方がいらっしゃるので、特定の地域の方だけ来ないでとはいえない。安全面を優先した」と苦渋の決断だったことを明かした。
花火大会8割中止
夏の夜空を彩る花火大会への打撃も甚大だ。今年は東京五輪・パラリンピック開催時期と重なり、取りやめる花火大会が多かったが、隅田川花火大会など、開催時期をずらして行う予定だったイベントにも新型コロナが直撃。中止に追い込まれた。
花火生産者らで組織する日本煙火協会によると、全国では例年、200カ所以上で花火大会が行われているが、今年はすでに8割ほどの中止が決定。製作した花火玉は来年に持ち越されるが、同協会の担当者は「この調子では来年も開催できるか分からない。(花火玉が)在庫になれば(花火をつくる)職人の仕事がなくなってしまう」と嘆く。
こうした状況について、関西大の宮本勝浩名誉教授(理論経済学)は「国内では100万人規模の大きな祭りや花火大会が20程度、30万〜50万人規模は150〜200程度ある。その多くが中止となれば影響は計り知れない」と指摘。経済的損失については「1兆8000億円程度になる」と推定する。
地域経済に与える影響を懸念する宮本氏は「地域観光は外国人が効果を高めており、これが戻らない限り厳しい状態が続くだろう」と話した。(大渡美咲)
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