2019年の米株の急上昇局面では、株価の伸びが企業利益の伸びを上回ったが、新年の幕開けを控え、投資家の熱狂に懸念を抱く株式ポートフォリオマネジャーはほとんどいない。
今年のS&P500種株価指数の上昇率は29%に達しており、2013年以来最高となるペースだ。このうち企業利益の伸びの寄与分が控えめな0.4%にすぎないことが、今年の株価上昇を際立たせる一因になっている。企業利益の伸びは、通常は株価の継続的上昇を支える最も重要な要因になる。このため、企業利益がさほど伸びていないのに主要株価指数が記録的水準に達する状況は、2000年のドットコムバブル崩壊の際に見られたような過熱リスク懸念を高めることが多い。
しかし今回は、株価バブルを懸念する市場参加者はほとんどいない。2019年の株価急上昇が米連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和のサイクルを伴っていることが、多くの人々を安心させている。株価にとっての最大のリスクと広く認識されている景気後退(リセッション)。ただ、それが目前に迫っているとの懸念は、FRBの金融緩和で後退している。今年の企業利益と株価の相関性の欠如は、主として偶然によるものだと指摘する声もいる。その主張によると、より長期スパンの比較の方がより適切な評価ができるという。現在のバリュエーション(株価評価)は、割安とは言えないものの、貿易摩擦が緩和され、経済のファンダメンタルズが少し以前と比べて良好になっている状況では、妥当なように見える。
フェデラル・インベスターズ社のポートフォリオマネジャー、スティーブ・チャバロン氏は、通常1年単位の比較期間をさらに1年延ばせば、企業利益に基づく株価評価は全く問題がないように思えると語る。S&P500種指数の2017年12月以降の上昇率は21%近かったが、同時期の企業利益の株価上昇寄与分は、主として同年末の法人税減税の恩恵によって25%となった。
この数値から見ると、株価には、価値評価面の懸念を引き起こさずに、さらに上昇する余地があることになる。価値評価面の懸念は、株価上昇がウォール街用語で「マルチプル・エクスパンション」と呼ばれる株価収益率の上昇局面によって引き起こされた場合に生じる。株価収益率は、企業利益の伸びの鈍化を覆い隠す場合がある。
前出のチャバロン氏は「だまされないで欲しい」と指摘。「みながリセッションや貿易摩擦について懸念したため、市場は人々の予想するようなマルチプルの反応を示さなかったのだ」と話した。
個々のセクターは似た様相を見せている。マルチプル・エクスパンションは、おおむね通信、ハイテク、生活必需品と公益事業の株式を上昇させた。このため、一見すると、市場のこの部分は今年、過熱したように見える。しかし、データは過去2年間にわたり、11の全てのセクターにおいて、利益の伸びがマルチプルの拡大を上回っていたことを示していた。加えて、通信や金融株など、これらのセクターの一部ではその間、バリュエーションが低下した。
これにより、株式市場は2017年12月の状況にほぼ戻り、アナリストが明らかに割安でも割高でもないと考える水準である、利益の18倍で取引されている。アナリストや投資家は、貿易をめぐる緊張が持続的に高まらない限り、株式が何年も連続して伸びる準備が整ったと述べているが、多くの企業の2020年に対する予想は控え目になっている。
ファクトセットによると、現段階で、ウォール街のアナリストは、来年の企業利益が前年比10%伸びると予想している。利益予想は修正される傾向にあるほか、ここ数カ月で下方修正されている予想があるものの、アナリストは予想が一部の中国製品の輸入にかかる関税を撤廃するという最近の米国の判断を織り込んでいない公算が大きいとし、それが幾分の伸びの余地を提供する可能性があると述べている。
ゴールドマン・サックスのアナリストは、S&P500指数が来年5.5%伸びると予想している。この予想はおおむね、企業利益の伸び率加速を想定したものだ。バンク・オブ・アメリカはより弱気で、S&P500指数が2.4%伸びると予想している。これもおおむね、企業利益によるとされている。
BMOキャピタル・マーケッツも、S&P500が今の水準から5.5%伸びると予想している。
BMOのアナリストは、「収益の伸び率は底に近づいてきているように思われる。幅広く悲観的な見方が存在していたことを考えると、今後、低下ではなく上昇の方向で驚きをもたらす可能性が大きい」と指摘した。
アナリストによれば、同時に、とりわけ経済に関するセンチメントが改善していることを踏まえると株式は他の金融資産に比べてより魅力的である。前出のチャバロン氏によれば、今年のFRBによる利下げとより広範囲な債券相場の上昇は、財務省証券の利回りを低下させ、株価の一層の上昇を正当化するものとなっている。
例えば10年物国債の利回りは先ごろ1.903%に低下し、S&P500の配当利回りとほぼ同水準となった。このことは、投資資金の流れが債券、MMF(マネー・マーケット・ファンド)などから株式など、よりリスクの高い商品へと反転するのを助けることになるかもしれない。
バンク・オブ・アメリカがファンドマネジャー約200人を対象に行った調査によれば、これらファンドマネジャーの株式保有額は今月、今年に入ってからの最高水準に達した。これらファンドマネジャーの運用資産は合計6270億ドル。これと同時にファンドマネジャーは、2018年8月以来初めて、今後12月間の利益増加を予想している。
USバンク・ウエルス・マネジメントの世界投資ストラテジストのトーマス・ハインリン氏は、「リスク資産にとって、取り巻く状況は現在かなり良好なのものだ」と指摘した。同氏は、「われわれは今年経験したようなS&P株価指数の上昇がほぼ30%になるような状況を予想してはいない。しかし、2020年については、それよりも低めの水準ながら、プラス圏となると見込んでいる」と語った。
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